本当は、温泉旅行で疲労困憊した心身を癒すはずだった。
疲れていた。疲れても疲れても、まだまだ仕事の終わりが見えない2月。私の仕事は、年度初めはまあまあ暇で、ゴールデンウィーク明けごろからぼちぼち忙しくなり、どんどん忙しくなり、正月明けぐらいから時々死にたくなる程度に追い込まれる。
3月になると年度末の色々な納期への色々な着地点が決まってくるので、しんどい中にももうすぐ解放されるという希望があるが、2月はまだ色々と奮闘、葛藤中で心身ともに張りつめていて安らぎが無い。安らぎは欲しい。
休日に家で仕事を持ち込まなければならないとき、私はあえてテレビを見ながら仕事することがある。といっても、つけているだけの状態であることが多いけれど。それでも、テレビがついているというだけで、仕事をしているのではなく休憩をしているのだという気分になる。どうしても仕事しなければならないけれど、どうしても休みたいときにそうする。
休日の午前は旅番組が多い。私はあまり旅行好きではないけれど、その時は疲労感のあまり、温泉いいなあ、旅館で美味しい料理いいなあと思った。そして、「4月になったら有給休暇とって温泉旅行に行こう」と決意した。
行先はベタに熱海あたりかな?熱海ってどこにあるんだろう?関東のどこかだな。伊豆方面か、そうか、伊豆か。伊豆って何県?私は関東の地理に疎い。とりあえず旅行ガイドブックのまっぷる伊豆を購入した。4月になったら温泉旅行に行く、そう思いながら就寝前にまっぷるを見ることがその辛い時期の私の精神安定剤となっていた。
まっぷる伊豆をくまなく眺めていると、どうしても目につくのは淡島マリンパーク、深海魚水族館、熱川バナナワニ園、そしてIZOO。温泉はどうでもよくなった。
前日に淡島マリンパークと深海魚水族館を廻り、その日は沼津駅からのスタート。熱海で乗り換えてJR伊豆線伊豆下田急行で河津へ。
河津駅のコインロッカーに荷物を預け、タクシー(河津駅から千円くらいだった)でIZOOに到着。
春休みもとっくに終わった平日のせいか、空いていた。
館内の湿った土を敷き詰めた通路をゆるやかに下りつつカメやらトカゲやらイグアナやらの展示を見た。
フィジーイグアナは全体の色彩も鮮やかでポップで美しく、瞳が少女マンガ風で美形揃いだった。
やがてヘビのコーナーへ。こうしてあらためて見てみると、ヘビは美しいものだなと感動した。何組かつがいの展示があったが、仲睦まじくピッタリと寄り添っていた。なんとなく羨ましい。
通路の途中でさわやかそうな係員のお兄さんがいて、生体を触らせてくれるという。
その日はメガネカイマン、ラットスネーク、ヒョウモントカゲモドキ、ミニプレートトカゲ。
私はミニプレートトカゲを選び触らせてもらい満足していたが、その日は客が少なすぎるせいか、こちらもどうぞ、これもいいですよとお兄さんに次々に奨められ、結局4体とも触らせてもらった。良い日だった。
ヘビは何度か触ったことがあるが、いつも思いのほかすべすべしていて感触が良いことに感動する。人間の手はヘビにはやや熱いので伝熱面を変えようとするする動くのがまた感触が良い。やみつきになりそうだ。
リクガメのエサを買い、おさわりコーナーを後にした。
リクガメは通路を好きにうろついている。エサは菜っ葉で、食べさせてみると、シャリシャリと実に感触の良い音を立てて食べた。良い音だ。やみつきになりそうだ。
やがて庭のようなところに出ると、タンチョウヅルやゾウガメやカメレオンがいた。野外のカメレオンはなぜか黒かった。下から見たときに木陰っぽく見えるように擬態しているのかな?
階段を上って再び屋内に入ると、爬虫類以外のエリアが続いた。
ゴキブリとかクモとか。苦手な人は注意。
爬虫類と両生類はたいがい抱き合わせにされがちなので、きっといると期待していたが、やはりカエルの展示も結構あった。アカメアマガエルは夜をイメージして真っ暗なスペースに展示されていた。暗くて見えなかった。
海外の派手なカエルばかりではなくニホンアマガエルなんかの展示もあった。
ワニエリアでは、展示エリアの下にかがめば人間が入れるスペースと、半球状のアクリルの観察エリアをつくり、ワニを直近で観察できるような趣向のものがあった。ワニはこちらにはまるで無関心だった。厳つい手やツメを間近で見ることができた。
やがて出口にたどり着き、出るとクロコダイルカフェ。メニューの半分くらいはワニ料理だった。ちょっとにがえぐい鶏肉風の味だった。
帰りのタクシーを待つ間、ショップで土産物を買った。


河津から伊豆急行で15分程度の伊豆熱川に行き、その日は熱川の温泉宿に泊まった。もともとの旅の目的はいちおう果たした。
食事は豪華だけど関西人の口には合わなかった。何もかも醤油味濃すぎ。味覚は地域差がどうしてもあるので、しょうがない。
翌日は熱川バナナワニ園に行った。
熱川バナナワニ園は本園のワニ園と植物園、分園の3つのエリアからなる。
分園のフルーツパーラーでプリンアラモードを食べた。メインの手作りマンゴープリンがそれはもう美味しかった。
分園にはフラミンゴやレッサーパンダもいた。種類も個体数も圧倒的にワニが多いにもかかわらず、ショップでのグッズ展開はなぜかレッサーパンダ推し気味だった。


カエルもいた。植物園のどこかの水槽にアフリカツメガエルがひっそりといた。それだけ。
この時はまだなかったけれど、IZOOでは2018年8月に体験型カエル館をオープンしたとか。
日本最大の体感型カエル館 KawaZoo【カワズー】 | 8月1日静岡県賀茂郡河津町にオープン!
この夏は行けなかったけど、いつかきっと行くから。